顧客とスタッフの満足度を上げる、老舗呉服店の加工サービス改善と店舗づくり
2020年に創業110年を迎えた、老舗呉服店。「千歳屋呉服店」として明治に創業後、「地域の衣料品店」「まちの呉服屋」として愛され続け、現在は「きもの千歳屋」としてきものを娯しむ人のサポーターとして営業中。
https://chitoseya.com/
活動概要
千歳屋には、きものに関する悩みをもったお客様が訪問する。
その際、千歳屋で販売したきものでなくても引き受けたり、たとえば「母の形見を汚してしまった……」と、「なんとか元通りにしてほしい」という気持ちで持ち込むという。千歳屋のスタッフは、「元通り以上」を目指して加工サービスを提供しており、こうした努力や価値の可視化・快適な作業空間づくりを目指した。
価格改定、作業性を上げるスペースの新設に加え、「目的購買」を前提とした店づくりから、店内に滞在しやすくお客様の興味やニーズを引き出すような「体験型」の店づくりに改編。
店内の改装や整理整頓による、空間づくりを実施した。
背景
豊富な在庫、スタッフの対応力、購めやすい価格、といった強みがある一方、手数の多い加工サービスの儲かりにくさや、加工サービスの利用者がきものの購入につながらないなど課題があった。
またコロナの影響で主力のきもの販売事業の落ち込みもあったことから、老舗としての歴史・ポテンシャルを活かしながら、努力が売り上げにつながる店づくりに挑戦した。
作業性・満足度向上のための、加工サービスコーナーの新設
これまで軽作業(検品やアイロンがけなど)は手狭なバックヤードで行なっていたところ、デザイン・設計の専門家をアサインし、加工サービス用のスペースを新設。
預かり品の出し入れや試着のしやすさも向上し、スタッフの作業性だけでなくお客様の満足度も高めることができた。
それによって、これまで手数の割に粗利率の低かった加工サービスの価格を見直し、加工サービスの受注を無理なく増やせるようになったことから、売上と利益の双方を向上することにつながった。
「売り場」から「体験の場」へ。店内展示と表示の見直し
加工サービスコーナーの新設によって店内の展示・収納スペースが縮小したため、在庫数を減らし、仕入れをさらに厳選するように。これによって在庫の回転率が向上し、資金効率の良い経営が可能になった。
また、コロナの影響による着物販売の落ち込みを受け、目的購買を主とした営業ではなく体験型の店づくりにコンセプトを変更。在庫や展示物の整理整頓作業というプロセスも含めて、「誰に、どんな体験を提供するのか?」という視点で、お客様に提供したい価値について再考する機会となった。
きものへの想いを言語化した、リーフレットのリニューアル
創業110年を越える歴史をもち、製品への敬意や愛着も深く、「整理・整頓」してしまうことの心苦しさは想像に容易い。
しかし、店のコンセプトを基軸にスタッフ全員で話し合って作業を進め、きものファンの想いにより応えられる加工サービスの充実化を実現。リニューアルしたリーフレットでは、リニューアルした加工サービスの紹介をはじめ、「何でも相談できるまちの呉服店」という長年のスタイルを体現しているサービスも記載した。
これからも成長しつづける呉服屋を目指して
イベントの企画や、コーナーごとの体験のリデザインなどを通じて、継続した「体験型の店づくり」を実践していく。
また、加工サービスの販売促進を行うことで、販売管理費をきちんと回収できる事業へと育てる。
さらに、「きものに興味はあるけれど、置く場所がない/購入するほどでもない」といった現代ならではのニーズを解決できるような新サービス開発にも着手予定。
Mindful Partners株式会社 ステージアップコンサルタント。中堅・中小企業の経営者支援を起点に、受動的な経営から自己主導的な経営への事業転換や事業承継支援などを行う。中小企業診断士。